充電容量は「mAh」ではなく「mWh」にすべきではないのか?


こんばんは、ツクシです。

スマホのスペックやモバイルバッテリーの性能を表す時、充電容量はほとんどの場合「◯○mAh」と表示されており、私たちもその数字を使用できる時間や充電容量の目安にしています。
しかしよくよく考えてみると、科学的に「mAh」を「充電容量」とするのには色々な不便さや語弊が生まれ、それを踏まえてかApplは最近一部製品の充電容量について「Wh」を使用するようになりました。

今回は「充電容量」について「mAh」の何が悪いのか、なぜ「mWh」にすべきなのか、基礎的な部分も説明しつつご紹介いたします。

 

 

そもそもmAhとはどんな単位か

まず初めに「mAh」とはそもそもどんな単位なのか?という話ですが、「m(ミリ)」は1/1,000の意味、「A(アンペア)」は電流量、「h(アワー)」は1時間という時間を示しています。

では「A」とは何かというと1度に流せる電気の量の事で、例えば水に置き換えるとホースの太さに該当し、ホースの太さが大きいほど1度に出てくる水の量は多くなるイメージです。

庭の水撒きなんかに使う細長いホースと、消防車に積んである大口径のホースでは例え同じ勢いで水を出しても出てくる水の量が圧倒的に違いますね。

なので「mAh」とは「1時間あたりに出せる電気の量(mm単位)」であり、充電容量とはとても呼べるものではないのです。

mAhに足りない要素

そんな「mAh」ですが、実は「V(ボルト)」が分かれば計算して充電容量と呼んで差し支えない数字を出す事ができます。

この「V(=電圧)」とは電気を押し出す力の事で、水に例えるとホースを通ってくる水の勢いに該当し、弱ければちょろちょろと出てきて、強ければドバドバと出てくるイメージです。

なので先ほど解説した「mAh(ホースの太さ)」に「V(押し出す力)」を掛け算する事で「Wh(ワットアワー)」、つまり電力量(1時間で出し切った場合の電気量)を知る事ができる訳です。

問題はその「V」がスマホやモバイルバッテリーなどに記載されていない事なのですが、実はこれにはちょっとした理由があるんです。

基本的に同じ電池で同じ電圧

ほぼ全てのスマホやモバイルバッテリーにはリチウムイオンバッテリーという二次電池が採用されており、電圧が3.6〜3.7Vとなっています。

もちろんメーカーや製品によって多少の違いはありますが、電圧がおおむね3.6〜3.7Vなので「Vが共通だからmAh × V = WじゃなくてmAhで比較できる」という考えに至る訳ですね。

https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf/ACA4000/ACA4000PJ3.pdf

この考え方はスマホが普及し始めた当時ならほぼ問題ない考え方ではあったのですが、タブレットが登場したりこの考え方を逆手にとった悪意ある業者によって、少しずつ大きなズレに変化していきます。

先ほど「ほぼ全てのスマホやモバイルバッテリーにはリチウムイオンバッテリー」という話をしましたが、iPadなどのタブレット類などは確かに同じ電池を採用しているものの、直列繋ぎで搭載して電圧を上げるモデルが登場してしまったのです。

簡単に例にすると、10,000mAhのモバイルバッテリーでスマホを充電する場合は10,000mAhに近い充電が可能ですが、タブレットの場合は直列繋ぎで電圧が3.7→7.4Vになっている場合があります。

すると10,000mAh(3.7V)のバッテリーで充電しても、5,000mAh(7.4V)程度しか充電されず、ユーザーにとっては数値の半分しか充電されてないように見えて誤解が生まれてしまうのです。

また悪意ある業者がモバイルバッテリーを作る際、例えば10,000mAhのニッケル水素電池(1.2V)を素材として使われた場合は、3.7V換算すると3,243mAhしか容量がない事になりますね。

しかし電池の種類と電圧が違うだけで公称している10,000mAhは守られているため、この商品を販売したり製造した業者を詐欺罪などで訴える事はかなり難しくなると考えられます。

誤解と詐欺を防げるmWh

この誤解や詐欺を防げるのが「mWh」で、「mAh」の説明の時にチラッと出てきましたが「mAhにVを掛け算した結果」なので、電圧が7.4Vでも3.7Vでも1.2Vでも「mWh」は変動しません

実際にAppleはiPad(第9世代)で公表している技術仕様について、「32.4Whリチャージャブルリチウムポリマーバッテリー内蔵」と記載しています。

つまりこの電池は「1時間で32.4Wの電力を出し切る電池」である事を説明しており、「A(=電流量)」や「V(=電圧)」の数値に関係なく総電力量を正確に表示できているんです。

長年の風習や多くのユーザーの認知からこれからも「mAh」が基準に使われていくのでしょうが、誤解や詐欺を防ぐ意味でも、正しい数字を使う意味でも、これから登場するであろう高エネルギーバッテリーの能力を正確に測る意味でも、「mWh」が使われるべきではないのか?と筆者は思いました。

自宅などの電気料金は「kWh」で計測されているので、検針表や振込用紙などを見てみると確認できますよ。

本来モバイルバッテリーと充電デバイス間で発生する電圧変更(昇圧や降圧)や回路の抵抗値、熱ロスなど他の要素でこんなに単純な数字や計算にはならないのですが、なるべく横道にそれない説明をしたかったため省力しております、ご了承くださいませ。